帯域を知ろう - ユーザと開発者の視点から考える、テレワーク時代の帯域圧迫を防ぐアプローチ

多くの人がテレワークに移行する中、帯域という言葉に注目が集まっています。インターネット上での社会的活動量が加速度的に上がっていく中、帯域をできるだけ圧迫しないためにはどのような工夫が必要になるのでしょうか。ユーザ、開発者、それぞれの視点から、帯域を上手に使うためのアプローチを、みやもと くにおさんが解説します。

帯域を知ろう - ユーザと開発者の視点から考える、テレワーク時代の帯域圧迫を防ぐアプローチ

誰もがある程度、高速なインターネットにアクセスできるようになって久しいですが、2020年3月以降、インフラとしてのインターネットの重要性はますます高まりました。多くの企業が業務をテレワークに切り替え、また、多くの人がインターネットサービスをより多く利用するようになったからです。

インターネット上の活動量が上がると同時に、「帯域」という言葉を耳にする頻度が上がりました。本稿では、インターネットを使うにあたって意識すべき要素の1つである「帯域」について、俯瞰的に解説を行います。

テレワーク時に必要な3種の神器~インターネットアクセスの手段、端末、VPN

テレワークの浸透によって「職場に行かず仕事をする人」が増えましたが、この“テレワーク”を実現するために必要なものは何でしょう?さまざまな意見があると思いますが、筆者はさしあたり以下の3つが必要になると考えています。

  • 端末(PCやスマートフォン、タブレットなど)
  • インターネットアクセスの手段
  • VPN

テレワークのための「端末」で気をつけること

多くの人がテレワークにあたってはPCを使用していると思いますが、業務上必要な機密情報を含んだファイルを扱うPCは、どんなものでもよいというわけではありません。PCをテレワークに適した状態にするには、大きく2つの方法が考えられます。ひとつは、必要とされるセキュリティ設定を施したPCを用いて、PCの紛失や盗難に備える。もうひとつは、リモートデスクトップなどを用いて、会社の中に設置されているコンピュータにインターネット経由でアクセスする方法です。後者の場合、手元で操作するPC上に極力情報を残さないようにするなどの対応が必要になります。

筆者の経験では、トラブルが起きやすいのは、リモートデスクトップを用いたパターンです。通常はPC1台で完結する環境を、手元の端末と会社の中に設置したコンピュータの2つに分け、さらにその2つの間をインターネットでつないでいるーーシステムの構成要素が増えれば、トラブルが発生する確率が高くなるのは、ある種、必然でしょう。

このように、何らかの手段でセキュアな端末を用意することに加え、テレワークを実施するためには、会社の定めた業務環境を使うために「インターネットアクセス」が必要となり、さらに安全に業務環境を使うために「VPN」が必要となります。

業務環境に必要となる「VPN」

会社が準備した業務環境や社内システムを、インターネット経由で誰もがアクセスできる、ということはまずありません。必ずしも安全ではないインターネットを用いて、業務環境やシステムに安全にアクセスするためのしくみがVPNです。

VPNの実現方式にはいくつかあり、Windows標準で準備されているVPNのしくみや、オープンソースで開発されているVPNのしくみ、また、ネットワーク機器ベンダにより開発・販売されているVPNのしくみもあります。

昔からよく使われているのは、IPsecという通信規約をベースにしたVPNのしくみですが、他にもSSLにより保護された通信をベースにしたSSL-VPNというしくみもあります。

アクセスできるデータ量を指す「通信帯域」

インターネットやVPNへのアクセス可否の次に考えなければいけないのは、アクセスできる通信量である「帯域」です。

帯域とは、ある時間内にどれだけデータを送れるか、の指標であり、通信速度と言い換えることも可能です。なお、通信速度の場合はその性能は「速い」「遅い」と表現するのに対し、帯域の場合は「広い」「狭い」と表現します(厳密には帯域は、周波数帯の広さを示す言葉であり、速度として表現するのは誤用です。しかし、通信で使える周波数帯が広いと、通信速度が向上する傾向にあるため、慣例的に通信速度でも帯域という用語を用います)。当然ながら、帯域が広いほうが、一定の時間内に多量のデータを送ることが可能です。

帯域を使う、とはどのような状態か?

インターネットは、単一の会社が運営しているものではなく、複数のネットワークの集合体です。そして、インターネット経由で何らかのサービスを受けるために、いくつものネットワークを使用しているような状態になります。

たとえばですが、以下の図のように、複数のネットワークを経由して、ユーザ側のコンピュータからサービスまでデータが送り届けられます。

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最終的にサービスを受ける際に使用できる帯域は、「ユーザ側のコンピュータからサービスを提供するコンピュータの間に存在する通信回線の間の帯域がどれだけあるか」で決まります。上の図の場合、ネットワークA、B、Cでどれだけの帯域を使えるか示していますが、ユーザとサービスの間で使用可能な帯域は、ネットワークBで使える帯域の10Mbpsになります。

ユーザ側のネットワークAとサービスを提供する側のネットワークCで、どれだけ使用可能な帯域が広くても、その間のネットワークBで使用可能な帯域が狭い場合、最も狭い帯域がサービスで使える最大の帯域になってしまいます。

ここでは説明を単純化するために、3つのネットワークだけを挙げていますが、実際にはさらに多数のネットワークが介在します。また、性能を最適化するために、途中経由するネットワークは、随時自動で変更されることも多いです。

また、「サービス」というように述べていますが、ここは最終的なアクセス先を指しており、VPNアクセスのためのゲートウェイもこの「サービス」にあたります。なお、VPNアクセスの場合、この先(図で示した「サービス」)からさらに、本来受けるべきサービスが控えています。

帯域が圧迫されると何が起こる?

また、帯域はなにも考えずに、無尽蔵に使えるわけではありません。なんらかの理由で多量のデータ転送を行い、帯域を多く使うことで、他のサービスで利用できる帯域を狭くしてしまう、といったことも有りえます。こうした事象を、「帯域を圧迫する」などと表現します。

では、帯域が圧迫されると何が起こるのでしょうか。実は、帯域の圧迫がどこで発生しているかによって、発生する事象は変わります。

ユーザ側帯域が圧迫される

これは、たとえばマンションなどで複数人で設備を共用している場合、発生しがちな事象で、ユーザ側でのインターネット接続速度に影響が出ます。この場合、ユーザが使用しているすべてのネットワークサービスの利用に影響が出てしまいます。

具体的には、「動画再生が途切れる、再生再開まで時間がかかる」「音声が途切れる」「データのダウンロードが遅くなる、途中でタイムアウトする」といった事象が考えられます。

特定のサービスだけが使えなくなるわけではないため、ユーザが問題解消を求める先は、通信サービスを提供する会社になる可能性が高いです。もちろん、特定のサービス提供者にクレームが向かう可能性もありますが、サービス提供者に解決できる事象ではないため、他のユーザには何の影響も出ていない旨を説明する必要があります。

サービス側帯域が圧迫される

これは、サービス提供側の想定を上回るユーザがサービスを利用した場合発生が想定されます。いざ発生してしまうと、当該サービスの提供そのものに影響が出ます。2020年5月に、あるメーカによるマスク販売時の初期に発生した問題は、この事象だと推測されます。

この場合は、帯域が圧迫されたネットワークを経由して提供されるすべてのサービスにおいて提供遅延、サービス不可になるなどの影響を受けます。また、懸念すべきは中途半端にサービスを利用できてしまうケースで、リトライを繰り返すユーザが発生させる通信により、さらにサービス側帯域を圧迫する、といった連鎖が起こりえます。当然ですがこうしたケースでは、ユーザからサービス提供者へのクレームが飛びます。

ここでは帯域が圧迫されることに起因したサービス提供遅延や提供不可の状態の話をしていますが、実際にこうした事態に至る要因は、ネットワーク以外の箇所に存在することも想定されます。サービスの適切な運用管理がなされていないと、原因の特定から対処までに時間を要するので注意が必要です。

途中経路の帯域が圧迫される

これは、ユーザ側でもなければサービス提供側でもない、たとえばインターネットサービスプロバイダ(ISP)側の設備に起因して、帯域が圧迫される(通信速度が遅くなる)ことがあります。その要因として、ここ最近のテレワークリモート授業の隆盛は無関係ではないでしょう。多くの人がインターネットを盛んに利用することでISP側の設備で発生している負荷が高くなり、速度低下が発生していることは容易に想像できます。この場合発生する事象およびクレームの向き先は、「ユーザ側帯域が圧迫される」場合に酷似します。

注目が集まるオンライン会議サービスを例に、帯域を考える

オンライン会議が、テレワーク実現のための重要な要素であることは、すでに多くの方が実感しているでしょう。遠隔でのミーティングを実施するシステムとして、WebEx1、Zoom2、Microsoft Teams3、Google Meet4などが挙げられます。いずれのサービスにもセキュリティ面など、課題があることも事実ですが、設定などを工夫することで回避可能なものも多く、初期状態で安全に使えるものも多いです。いずれにしても、使用しているサービスの設定は、一度確認してみることをお勧めします。

さて、ここからはオンライン会議システムがどのように帯域を使用しているかを考えていきます。(文章では非常にわかりづらいですが)「Windowsのリモートデスクトップ」を使って職場のコンピュータにアクセスし、そこからさらにオンライン会議システムにつなぐ、といった使い方を前提にしてみます。整理してみると、いくつかの課題が見えてくると思います。

リモートデスクトップの利用により、必要な帯域が倍付に

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