上達したいVim初心者のための設定・プラグインの見つけ方、学び方〈エディタ実践入門〉
Vimの深淵はとても深く、学ぶことは簡単ではありません。本記事では、初心者がVimをどのように学べばよいか? を解説しています。Shougoさんの寄稿です。
こんにちは。Shougo(@ShougoMatsu)です。今回は、Vim初心者のための記事を執筆することになりました。よろしくお願いします。
私のことを知らない人のために簡単に自己紹介しておきます。私はこれまで10年以上もの間Vimに関わっており、deoplete、dein、denite、defx、neosnippetといった各種プラグインを作成したり、ときにはVim本体にパッチを書くなどといった活動を行っています。
今回、初心者向けの記事を執筆することに決めたのは、勉強会などで「Vimをどのように学べばよいか?」について質問されることが多く、皆が同じ問題で困っているのだと気付いたからです。Vimの初心者向け講座は山のようにありますが、私はこれまでにない切り口で初心者が最短で実力を付けるための道筋を解説していきます。
ただし、今回の記事では具体的なVimの設定方法やVim scriptについての解説を行うことを目的にしていません。それらをまともに解説すると、一冊の本になってしまうほどだからです。
この記事における「初心者」ですが、今回は「Vimの:help
を読めない、読んだことがない人」と定義します。Vimの:help
を自由自在に読めるようになれば一人前なので、それを目標としていきましょう。
- vimrcを極めることがVimを極める近道
- 最小限の設定をもとにした:helpの調べ方〈実践編〉
- Webエンジニア向けに推奨するプラグイン
- Vimを勉強するための参考書籍
- まとめ ─ 苦労して見つけた知識こそが本物
vimrcを極めることがVimを極める近道
vimrcとは、Vimの設定ファイルです。vimrcを設定することで、Vimの動作を好きなように変更することができます。
素のままのVimでもある程度テキストの編集作業は行えますが、Vimは互換性を非常に重視しているので、デフォルトで使える機能は少ないです。vimrcの設定を有効化することでVimの真価を発揮できます。もちろんプラグインをインストールすることでもVimを便利にできますが、Vimを極めるにはまずvimrcの設定を極めることこそが近道と言えるでしょう。そもそも、Vimのプラグインはvimrcに書いていた設定を単体で動作するようにパッケージングしたものなのです。
vimrcを扱う上で覚えるべきなのがVim scriptです。「Vimでしか役に立たないから」とVim scriptの勉強を嫌がる人がいます。しかし、vimrcはVim scriptを用いて設定するため、プラグインを書くにもプラグインを使うにもVim scriptの知識は必要なのです。Vim scriptを避けてVimを使っていると、きっとどこかでつまずきます。
世の中には「設定することは邪道、素のVimこそが至高」と考える人がいます。それも一つの考え方だと思いますが、何事も極端はよくありません。「必要な機能を取捨選択する、必要な設定のみを有効化する」ことこそが大事です。そのためにはVimの基礎を知り、自分に必要な設定とは何か考える必要があります。
最小限のvimrc
初心者がVim力を上げるには、最小限のvimrcから始めてみるといいでしょう。まっさらなvimrcにあなたの必要な設定やプラグインを加えていくのです。
このとき、「自分が理解した設定のみvimrcに加えていく」という原則を守るようにしてください。これを守ることにより、あなたのVim力は次第に向上し、「なぜこの設定をしているのか分からない」ということもなくなるはずです。
私の考える最小構成は以下のようなものです。シンタックスハイライトと、ファイルタイププラグインのみ有効化しています。
syntax enable filetype plugin indent on
最小限の設定をもとにした:help
の調べ方〈実践編〉
チュートリアルとして、最小限のvimrcに記述したsyntax enable
とfiletype plugin indent on
とは何なのか、実際に:help
で調べてみましょう。
まずはsyntax enable
についてです。以下のように
:help :syntax-enable
と実行してドキュメントを見ると、この設定の意味が記述されています。
さすがに初心者が該当するドキュメントを直接見つけるのは難しいでしょう。その場合はまず:help syntax
と検索してhelpバッファを開きます。ここに、シンタックスハイライト全体に関する記述がされています。
helpバッファの中でsyntax enable
を検索すれば、該当する項目にたどりつけるでしょう。私自身、該当する記述が見つからない場合は、ドキュメント内を検索して探すことがとても多いです。
ドキュメントを読むと、このコマンドはシンタックスハイライトを有効にするためのコマンドだと分かります。
ちなみに他の人のvimrcによってはsyntax enable
ではなく、syntax on
と記述されているかもしれません。syntax enable
とsyntax on
の違いについても:help
には記述されています。違いを調べるのは読者への宿題としておきましょう。
次に、filetype plugin indent on
について調べてみましょう。まず:help :filetype
で調べます。filetype plugin indent on
とは:filetype
コマンドの引数にplugin indent on
を指定しているということなので、まずは:help :filetype
で調べるのです。
:help
バッファの中でfiletype plugin indent on
を検索すると、以下の記述が見つかるはずです。
Overview: *:filetype-overview* command detection plugin indent ~ :filetype on on unchanged unchanged :filetype off off unchanged unchanged :filetype plugin on on on unchanged :filetype plugin off unchanged off unchanged :filetype indent on on unchanged on :filetype indent off unchanged unchanged off :filetype plugin indent on on on on :filetype plugin indent off unchanged off off
つまり、filetype plugin indent on
とは、detection(ファイルタイプ検出)、plugin(ファイルタイププラグイン)、indent(インデント)を全て有効化する設定なのです。detection、plugin、indentが具体的に何をするのか調べることは、読者への宿題にしておきます。
このように:help
を調べていくだけで、芋づる式にどんどんVimの知識がついていくことが分かるでしょうか。:help
を活用する利点はここにあります。
ここでは簡単に:help
の引き方を説明しました。:help
の読み方や調べ方については、少し古いですが以下の記事が参考になるでしょう。
これらの記事はVim界で有名なthinca氏とtyru氏というVim Hackerが執筆しているので、信頼ができます。
信頼できる情報を収集すること
ところで、皆さんはVimの情報を得るとき、どのように検索しているでしょうか? 検索で適当に出てきた記事の設定をそのまま利用してはいないでしょうか?
本当にVimを上達したいのなら、まず誰が記事を書いたのか確認しましょう。無名の誰かの記事よりも、Vim界で活躍している、プラグインを制作している人の記事の方が、情報が間違っている可能性が低く信用ができます。
間違った情報を鵜呑みにすると、あなたのテキストエディタ生活に悪影響を及ぼすので注意しましょう。
私が:help
を読むようにアドバイスしているのも、記述されている内容の信頼性が高いからです。:help
のドキュメントを書いているのは基本的にVimの開発者です。開発者はVimの表も裏も知りつくしています。どんなWeb上の記事よりも:help
の記述の方が信用できるのです。基本的には:help
をリファレンスとし、Web上の記述は参考程度にしましょう。
Webエンジニア向けに推奨するプラグイン
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