GitHubリポジトリで8000スター獲得、人気OSS「Boostnote」オープンソース化の軌跡

GitHubリポジトリで8000スターを獲得しているプログラマ向けノートアプリのBoostnote。グローバルな開発コミュニティを築き上げた経緯についてインタビューしました。

GitHubリポジトリで8000スター獲得、人気OSS「Boostnote」オープンソース化の軌跡

Boostnoteというアプリをご存知でしょうか?
こちらはElectronで作成されたデベロッパー向けのノートアプリ。実は海外ではとあることでとても有名なアプリなのです。

なんと企業が事業として開発しているアプリにもかかわらず、コードをすべてオープンソースとしてGitHub上に公開しているのです。海外を中心に注目度は高く、世界中のコントリビューターがBoostnoteに携わっています。現在、GitHubのスター数が8000を超える人気のOSSとなっています。

Boostnoteはどのようにグローバル展開とし、どのように開発コミュニティを広げていったのか、今回はそれらを手がけるBoostIO社のCEOである
横溝一将(よこみぞ・かずまさ/1kazup_botさん、CTOのChoi Junyoung(チェ・ジュンヨン/2rokt33rさんにインタビューをしました。

日本と海外における開発者の考え方の違いや、17歳の未踏ジュニアエンジニアとの出会い、グローバルファーストに開発を行うメリットなど、オープンソースを公開しているお二人にしか体験できない数々の世界が広がっています。

今回のインタビューを通して、オープンソースという文化だけでなく、日本と海外の文化の違いを知り、開発者としての自分のあり方を深く考えなければならないと思いました。

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横溝一将さん:北九州市立大学を卒業後、福岡にて起業。受託開発を中心に仕事を行う。その後、ハッカソンの優勝をキッカケに株主と出会い上京を決意する。現在はBoostIOのCEOとして、経営面や営業面などの業務をこなしながら、開発にも携わっている。

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Choi Junyoungさん(※以下、愛称のサイと表記):釜山から留学し、九州大学在学時に横溝氏と出会う。JavaやPHPなどの言語を経て、現在はTypeScript、Reactを中心に開発を行なっており、BoostnoteではCTOを務める。現在は韓国と東京を行き来する生活。

オープンソース化することによって開けた世界

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Boostnote:プログラマのためのノートアプリ。100種類以上のプログラミング言語にフォーマット対応しており、Markdownでの記載が可能。GitHubにてオープンソースとしてソースコードが公開されており、世界中にコントリビューターがいる。GitHubではスター数が8000を超えている(2018年6月現在)。

──Boostnoteというアプリケーションを作ろうと思ったキッカケは何だったのでしょうか?

サイ 今はMarkdownでコードを記録していくアプリですが、開発当初はノートアプリですらありませんでした。最初はchefみたいな感じで、CLIのコマンドをサーバから持ってきて実行するようなサービスにしようと思っていました。何かのプロジェクトを始めるとき、サーバに新しいOS入れたりすると毎回同じコマンドを打つじゃないですか? 同じことを繰り返すことが面倒だったので、そういったCLIコマンドのスニペットをためておけるWebサービスを目指していました。

──なぜそこから現在のノートアプリのような形にピボットしたのでしょうか?

サイ 正直なところ、CLIをためていくサービスはギーク過ぎました。使われる幅が狭いんです。CLIだけを保存できるのではなく、より一般的にするためにMarkdownでコードをメモしていけるような今の形にしていったんです。簡単に言ってしまうと一般的なニーズに合わせたということです。

──Boostnoteはオープンソースで開発していることが特徴的ですが、オープンソースにすることは初期設計の構想にあったのでしょうか?

横溝 初期の構想にはありませんでした。開発を始めて半年ほどたったときに、サイがオープンソース化について案を出しました。

サイ オープンソース化した方が面白そうだし、可能性を広げられそうだなと思ったんです。あとは性善説を信じて「公開することで、誰か助けてくれるだろう」みたいな気持ちもありました。

横溝 僕は当初、オープンソース化には反対していました。やはり公開することでそのままソースコードを真似されてしまうんじゃないかという不安があって。でも、最終的には「面白そうだからやってみよう」ということで意見が一致し、公開することにしました。

結局は公開から1年半たっても、Boostnoteをそのまま真似したようなアプリは一つも出てきませんでした。Boostnoteの開発者コミュニティが一体となって開発は進んでいるので、オープンソース化は絶対にやってよかったと言えますね。

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BoostnoteのSlackには開発者グループがあり、日々ユーザ機能やバグなどについて議論されている。横溝さんやサイさんが議論に加わらなくとも、活発にやりとりがされており、コミュニティはユーザーが主体となって成熟している。

──Boostnoteの開発者のコミュニティには現状でどのくらいの人が関わっているのでしょうか?

横溝 僕たちの会社からコアで関わっているのは3人だけです。しかしSlackには500人、Facebookには600人ほどの人がいます。彼らがやりとりを重ねてBoostnoteは作られています。もう僕たちが加わらなくても自発的なコミュニケーションがとられていて、コミュニティ内で誰かが質問すると、誰かが答えるという形ができています。

サイ プルリクも週に20個以上くるので、現状はそれを見るだけで私は手一杯になっています。自分でコードを書いている時間もほとんどありません。

──今は開発者のコミュニティが形成されていますが、Boostnoteがオープンソース化してからすぐにそういった反響はあったのでしょうか?

サイ 公開直後はそれほど反響はありませんでした。今のようにプルリクがたくさん来ることはなかったですね。

──いつ頃から多くの反響を感じるようになったのでしょうか?

横溝 BoostnoteはGitHubが開発したElectronを用いて作られているデスクトップアプリなんです。Electronが公開されてからすぐに僕らは開発を始めていました。それで運がいいことにElectronの公式紹介ページに事例としてBoostnoteを掲載してもらっていたんです。その時期はある程度アクセスが上がりました。

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BoostnoteのGitHubのスター数の伸び率を表したグラフ。2017年ごろに一気に上昇し、そこから右肩上がりで伸び続けている。

横溝 GitHubのトレンディングに載った際、爆発的にスター数が伸び、Boostnoteが世界的に認知されました。それをきっかけに海外の「OMG!ubuntu」や「FOSSMint」といった複数のメディアに取り上げてもらい、その記事がTwitterでも追いきれないくらいシェアされました。その後は順調に伸びていますね。

──日本で拡散されて広まった訳じゃなく、国外のメディアによってシェアされたんですね

横溝 Boostnoteはなるべく日本の色を消そうと思って作っているので、それも関係あったのかなと思います。

──なぜ「日本の色を消そう」と思ったのでしょうか?

横溝 とあるアメリカ人の知り合いに「世界で戦うなら日本語はやめろ」と明確に言われたという経緯があります。ハッとして、すぐに日本語のLPページなども削除しました。今はUIも変更してグローバルファーストを意識するようにしています。

よくよく考えてみると、自分が知らない外国語のLPを見た際に「このアプリを使うか?」と、聞かれたら絶対に使わないですよね?英語か母国語以外のものって選択肢に入らないと思うんですよ。

サイ 中国にアリババという超巨大な会社があるじゃないですか?あそこがオープンソースでライブラリを出したんですけど、半分は中国語で半分は英語みたいな状態だったりするので、離脱する人が多かったという話を聞いたことがあります。

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Boostlog:プログラマのためのブログプラットフォームサイト。すでに200カ国以上の国々で利用されている。

──「日本の色を消す」という意味では、同じように運営しているBoostlogというサービスも始めからグローバルファーストを意識して作られているように感じました。

横溝 そうですね。Boostlogも同様に日本の色は消すようにしています。

──いずれはBoostlogもオープンソース化するのでしょうか?

横溝 はい、オープンソースにしようと思っています。オープンソースはコミュニティを作るための良い手段なんですよ。手段としてのオープンソースと言ってもいいかもしれません。
「開発者のコミュニティを作る」という目標は、僕らのやらなくちゃいけない使命だと感じています。

Boostlogは利益をまったく考えていなくて、そういった開発者のコミュニティを作る一つの場所だと考えています。

──そういった使命感は起業したときから持っていたのでしょうか? それともBoostnoteをオープンソース化してから生まれたものなのでしょうか?

横溝 完全にオープンソース化してからですね。Boostnoteの開発コミュニティって自立分散的に成り立っていて、ほぼ僕らが管理しなくてもよい状態です。SlackやGitHubでユーザが疑問を投げたら、誰かが回答してくれるし、バグレポートも誰かが解決してくれます。

──オープンソースにすることによってさまざまな恩恵があったのですね。ただその一方でオープンソース化によるリスクもあると思います。どのようにお考えでしょうか?

横溝 もちろんリスクはあります。セキュリティ的な面もそうですし、大勢が関わっているのでコミットをミスすると実質巻き戻しができないというものあります。僕らのような会社ではいいですが、これを上場企業などでやるとリスク管理やその対応が大変ですね。

サイ BoostnoteのライセンスはGPL V3をつかっていますが「少しは真似しづらくなるかもしれない」という妥協から選んだものでした。現在の状況を考えると、もっと規制のゆるいMITで公開してもよかったのではと思っています。

ただ、この選択はBoostnoteだからこそできることなんです。オープンソースを企業がやる場合、公開範囲をハッキリさせて、ライセンスまで気にしないといけません。例えば大規模なサーバ系のツールをオープンソース化するとしたら、どこまで公開するのかは慎重に考えるべきだと思います。やはりそのまま真似されるリスクはあるので、会社が何をやりたいかを考えた上で公開範囲やライセンスを決めるのは大事なことです。

いろいろなリスクはありますが、Boostnoteは開発に関わってくれる人が多く、作り上げてきた開発コミュニティは簡単に真似できるわけじゃないから、今は何も怖くはないですね。

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コントリビューターが自由に開発できるような環境を作りたい

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