子育てを支える技術 ─ フルスタックお父さんとエンジニアとしての成長を両立させるには

お父さんは出産を除くすべての子育てタスクを担当できるとして、エンジニア的なアプローチで育児に取り組む白山文彦(@fushiroyama)氏が、キャリア構築や技術的成長との両立について語ります。

子育てを支える技術 ─ フルスタックお父さんとエンジニアとしての成長を両立させるには

こんにちは、白山@fushiroyamaと申します。主にモバイルアプリ開発を生業としています。

4年前に第一子をリリースして地道な改善施策を重ねつつ、半年前にめでたく第二子もカットオーバーしました。以来、外ではソフトウェアエンジニアとして外貨を稼ぎつつ、家庭ではフルスタックお父さんとして、食事に風呂に寝かしつけに夜泣き対応にと奮闘しております。

その過程で「エンジニアでよかったなぁ!」と感じた点や「こういう考え方やアプローチはエンジニアならではかもしれない」と感じたことが少なからずあったので、ぜひ紹介したいと思います。

20代後半から30代前半にかけては、エンジニアのキャリア形成にとっても非常に重要な時期です。いま絶賛子育て中の方だけでなく、これから結婚・子育てを考えている若手エンジニアの皆さんにも、僕の経験が先行事例として参考になればこの上ない幸いです。

※本稿には、著者が見聞きし、経験した出産や育児に関する記述が含まれています。それぞれに関する客観的な情報が必要な場合には、掲載した参考リンクなど専門家による記事をご参照ください。

エンジニアほど子育てに向いている職業はない

まず、最初に僕が申し上げたいのは、子育てをしていて「エンジニアでよかったなぁ!」と感じることがとても多いということです。

  1. リモートで成果を出しやすい
  2. 転職や休職・復帰がしやすい
  3. 会社の行事に参加しなくても許される
  4. 当事者意識が高い人が多い

これらの点でエンジニアは子育てに向いています。

1. リモートで成果を出しやすい

エンジニアは、リモートワークで成果を出しやすい職種です。その理由をいくつか挙げてみます。

成果主義的な働き方がしやすい
時間ではなく成果に対してコミットメントがあり、労働集約的ではない
GitHub等のソースコード管理ツールによって、ソフトウェア開発の履歴を定量的に可視化しやすい
コミュニケーションがとりやすい
ツールの進化によって、テキストチャットのみならず、映像・音声を使ったコミュニケーションも、場所や地域を問わず取りやすい
会社に集まる意味が以前より薄れている
コミュニケーションツールの発展のほか、サーバインフラも自社インフラからクラウド環境への移行がすすみ、一箇所に集まる必要性がなくなりつつある

リモートワークがしやすいと、子育てはずっと楽になります。通勤時間を子供の保育園の送り迎えや早めの夕食・入浴等にあてることができますし、両親が電車や職場で病気をもらってくるリスクも下げることができます。

また、リモートからある程度のレスポンスとパフォーマンスが確保できれば、病気看護中も勤務扱いにしてくれるような会社もあり、子育てエンジニアが働きやすい社会になりつつあると感じます。

このような背景には、単に「エンジニアの働き方がリモート向きだ」というよりは、エンジニアの重要性が以前よりも増し、会社側もエンジニアが働きやすい環境を作るためにコストを割くことが必要不可欠になってきた、という方がより本質的でしょう。

2010年代後半の昨今では、「自社にエンジニアを抱える」ことが「他社への競争力となる」時代はとうに終わり、自社にエンジニアを抱えて目まぐるしく移り変わる世間の要求に素早く柔軟に対応することが「会社が生き残るための最低条件」となりました。

いかなる産業も、もはやエンジニアなしに成り立たないのです。会社がエンジニアの生産性を最大化するために努力することは、当然の経営課題とも言えます。

会社も、リモートで成果を出せるエンジニアには積極的にリモートを推奨することで、社員の満足度やロイヤリティを高めることができますし、結果的に採用に貢献したり、離職率の低下に寄与したり、とメリットも多いはずです。

2. 転職や休職・復帰がしやすい

技術職の強みは、やはり何と言っても転職市場での価値の高さです。自分が転職活動していた体験だけでなく、企業で採用する側になって改めて痛感させられますが、スキルや経験のあるエンジニアを採用することは本当に難しくなりました。

仕事内容が面白くて給料が高いといった条件は、よいエンジニアからはもはや「足切り条件」として扱われ、さまざまな付加価値を求められることもしばしばあります。

  • 一緒に働く仲間が優秀で刺激的である
  • ストックオプションのような将来の金銭的な可能性
  • 自由な勤務体系やワークライフバランス

裏を返せば、エンジニアはこれらを選べる立場にあるということです。実際に僕も子育てに専念するため、当時勤めていたスタートアップから、労働時間に融通が利くいまの会社に転職しました。

ありがたいことに、その際は「仕事が決まらなかったらどうしよう……」とか「子育てを優先する代わりに給料が下がるかもしれないなぁ……」というような心配をする必要がほとんどなく、いいとこ取りですんなり転職が決まりました。

友人や元同僚にも、子供が生まれるタイミングで一時的にフリーランスになって仕事量を調整したり、お父さんも育休を取って最初の3カ月はお母さんと一緒にフルタイムで子育てに専念してから職場に復帰したり、本来はリモートワークを認めない方針の会社に勤めているにもかかわらず、交渉の結果、特別にフルリモートを許可してもらい、子育てをしつつ働くエンジニアの例を少なからず見聞きします。

僕自身は育休こそ取りませんでしたが、第二子が生まれてしばらくはチームリーダーに相談して、毎日1分たりとも残業しないことと突発的な看護休暇を認めてもらい、父親としての責務を果たすことができました。

3. 会社の行事に参加しなくても許される

これは過度に一般化するつもりはありませんが、僕の観測範囲では、エンジニアは会社から強制されるよくわからない飲み会や休日に駆り出される行事等を嫌う傾向にあるように思います。

僕自身も同様で、子育てをしているときはなおさら参加したくありません。こういう場合、僕は一貫してきっぱりと参加を断っています。

ただし、断るだけでは印象もよくないので、「小さい子供がおりますので、新しいメンバーの歓迎会は飲み会ではなく『チームランチ』にしませんか?」といった代替案を出すと、たいていの場合は理解してもらえます。

これも、こうハッキリと伝えられる背景には「自分は付き合いで給料をもらっているわけではない。エンジニアリングで成果を出すことで社に貢献している」という自負があるからだと思います。

そのうち断っても「まあ、あの人はエンジニアだからなぁ」と見逃してもらえるか、そもそも誘われずに済むことが多くなりました(これがよいことかどうかは議論の余地があると思うのでオススメしているわけではありません^^;)

4. 当事者意識が高い人が多い

これも僕の観測範囲なので一般論として言うわけではありませんが、少なくとも自分の周りではエンジニアは非常にいいママ/パパになることが多いです。

理由はいくつか分析していますが、

  1. 子供が自分の成果物という明確な当事者意識があり、意欲と愛着をもって子育てに取り組む人が多い
  2. ツールやアプリを積極的に利用して自動化したり、方法論に落とし込むことで不確定要素を排除したりすることが好き、もしくは得意である

というようなエンジニアの性質が関係しているのではないかと考えています。

子育てに関する心得と当事者意識

さて、これまで単に「子育て」と言ってきましたが、子育ては大きく分けて2つのプロジェクトから成り立っているのではないでしょうか。

1つは「子供自身」に関わるプロジェクトで、主なタスクは次のようになります。

  • 出産
  • 授乳
  • おむつ替え
  • 寝かしつけ
  • 子守り
  • 看病
  • 保育園の送り迎え、など

もう1つは「家庭を運営する」ためのプロジェクトです。

  • 食事
  • 洗い物
  • 洗濯
  • 掃除
  • 買い物
  • 勤労(給与収入獲得)

お父さんにできないタスクは出産以外にない

さてここでみなさんに質問があります。上記のうち、お父さんが担当できるタスクはいくつあるでしょうか?

答えは……、出産以外すべてです!

お父さん同士で話をしていると、おむつやお風呂はパパも担当している家庭が非常に多いものの、「授乳と寝かしつけ&夜泣き対応はお母さん専門」というご家庭があります。「おっぱいは母親しかあげられない」「子供が母親でないと泣き止まない」という意見を聞くと、「ホント……?」と思ってしまいます。

たしかに、母乳はお母さんしかあげられません。しかし、粉ミルクならお父さんがいつでもあげることができます。

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産後しばらくの間だけ「初乳」という赤ちゃんの免疫力を高める成分を多く含んだ母乳が出ますが、そのあと母乳はどんどん脂肪分と糖を多く含んだ成分に変わっていき、その段階になるとほぼ粉ミルクで代替できると考えられています。

参考:2母乳育児推進の問題点――粉ミルクは本当に悪いのか!? / 森戸やすみ / 小児科専門医 | SYNODOS -シノドス-

また、お母さんでないと泣き止まないというのは、ハッキリ言って甘えです! 別にお母さんだからなんとかなっているわけではなく、赤ちゃんがなんとかなるまでお母さんが抱き続けているにすぎないのです。

一般的に男性の方が腕力も体力も強いケースが多いですから、重労働である寝かしつけと夜泣き対応こそ、お父さんが担当すべきだと僕は強く考えています。その他のどのタスクも、お父さんができないものは存在しません。

僕は、産前産後の入院の間は長女と2人でひと月たらずを過ごしましたが、この話を保育園の保護者にすると一様に驚かれました。たいていの家庭はお母さんが里帰りしつつ、上の子も実家に預けて産後落ち着くまで過ごすという選択をされるようですが、「その間、お父さんは一体何をしてるの?」と思ってしまいます。

これから出産を控えたご家庭の旦那さんは、奥さんと奥さんのご実家に頼るという選択を安易に選ばず、ぜひ自分に何ができるか再検討されてはいかがでしょうか。

タスクは50%以上を取る心構えで

子育てを構成するタスクのうち、どれだけをお父さんが担当できるかはもちろん家庭次第ですが、僕の中では「半分以上取る心構えで」という目標があります。

2018年現在、男性が出産を肩代わりすることはまず不可能です。出産はお母さんが担当することになるでしょう。

出産は、長時間にわたる命がけの壮絶なイベントです。僕は助産師さんに「12時間以下なら超安産だからね!」と言われましたし、僕の友人は、72時間もかかったそうです。帝王切開の場合はお腹にメスを入れますし、経膣分娩でも多くのケースで赤ちゃんが出てくる部分を切りますから、お母さんが無傷ということはないのです。

そのように子育てを構成するなかで最も大変なタスクをお母さんに担当してもらう以上、残りすべてをお父さんが担当してもやり過ぎということはないでしょう。

実際に残りすべてというのはなかなか難しいですが、「相手より多くやる」ぐらいのマインドセットでいると一番大切な時期を夫婦円満で乗り切れる気がします。

前述の通り、せっかくエンジニアは時間に融通の利く働き方をしても成果を出しやすいのですから、ここぞとばかりにそのアドバンテージを活かしましょう!

イクメンではなく「お父さん」になろう

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