エンジニアとしてのPDCAを超長距離ランで学ぶ。裸足にサンダルで100マイル走ったら世界が広がった!

100キロ、100マイルという超長距離を走り切るには、高い目標設定とPDCAサイクルを回すことが必要。これは仕事と同じです。国内外を走り続ける井原正博さん(ビットジャーニー代表)に、エンジニアとして成長するPDCAを超長距離ランから語ってもらいました。

エンジニアとしてのPDCAを超長距離ランで学ぶ。裸足にサンダルで100マイル走ったら世界が広がった!

Yahoo! JAPANやクックパッドでの開発を経て、ビットジャーニーで代表を務める井原正博(いはら・まさひろ/1@ihara2525です。情報共有ツール「Kibela」の開発・運営を手がけてるかたわら、プライベートでは超長距離のランを楽しんでいます。

毎日ディスプレイと向きあってばかりで、あまり運動をしないイメージもあるエンジニア。そんなエンジニアが運動、それも100キロ、100マイル(1マイルはおよそ1.6キロメートル)という超長距離走、ウルトラマラソンやトレイルランニングを行うと何か変わるでしょうか? 例えば、仕事ができるようになったりするのでしょうか。

あくまで自分の中での相対的な比較ですが「超長距離走で、確実に以前より仕事ができるようになる」と僕は思います。

この記事では、それまで一切運動らしき運動をしていなかった僕が、100マイルのトレイルランニングを完走するに至った経緯と、そこから得られた学び、そして仕事にどう活かせるかを、自分自身の体験から考えてみたいと思います。

[planの章] 満員電車から逃げるために走り出す

長距離ランニングはつらい。それなのに走り出したのは、とにかく満員電車に乗りたくなかったからです。

25歳のころ転勤で東京に来てしばらくは電車で通勤していましたが、年を追うごとに満員電車がつらくなってきました。クックパッドに勤めていた2010年頃から、電車に乗らないで通勤しようと、次のようなさまざまな方法を試しました。

1. 自転車
社内に持ち込めるようにブロンプトンの折りたたみ自転車を買う、片道約25分
2. 徒歩
ひたすら歩くのみ、片道約1時間
3. タクシー
往復5,000円程度。9時半出社だと通勤時間真っ盛りで電話をしてもなかなか捕まえられず、必死こいて各タクシー会社に電話する日々。朝は渋滞しているのでけっこう時間がかかるが、夜は早い

実は一度だけ「ランニング通勤もやってみるか」と、靴を買って休日に会社まで走ってみました。しかし、自宅から約1キロほどのスーパーで挫折。折り返して、歩いて家に戻り「これは無理だろ」と悟りました。

そして時は過ぎ、2013年の春。タクシーを呼んでいてはお金がかかるし運動にもならないと一念発起。以前に買った靴を出してきて、ランニング用の服も少し揃え、あらためてランニング通勤を始めてみました。

走り出してみると体は重く(実際に現在より7~8キロは重かった)、走ることに慣れていないこともあり、会社に着いた時点で一仕事やり終えた気分です。ライフはほとんど残っていません。

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初めてランニングで出社したときの記録

それでも「まあ、しばらくはやってみるか」と、会社まで走って通勤する生活を3カ月ほど続けました。

一気に体重が落ちて、さまざまな数値が改善

走って通勤をなんとなく続けていると、1カ月強で体重が5キロほど減り、ウェストは8センチダウン。3カ月目には、一気に体重が落ちました。

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走って通勤した4年半の体重の記録

あまりに体重が落ちたので、健康診断で看護師さんに「病気じゃない?」と心配されたものの、血圧、コレステロール、体脂肪率などなど体のさまざまな値が改善。会う人みんなに「痩せた」と指摘され、「いや~、自分ではよく分かんないっすよ」と答えながらも、痩せていることが明らかに実感できました。

以前から「シュッとしたおっさんでいたい」と思っていたこともあって、嬉しい副作用でした。

当初はかなり必死に走っていたのですが、3カ月目くらいには普通に5~6キロを走るくらい(1キロを6分程度のペース)であれば、それほどしんどくなくなってきました。

自宅が自由が丘で、会社は白金台。電車だと、いったんオフィスと反対方向に最寄り駅まで歩き、大岡山で乗り換えて、南北線の超深くにあるホームから地上に出て、さらに会社まで10分程度は歩きます。乗り継ぎがうまくいっても自宅から会社まで45分程度かかりました。夜遅くなって電車の本数が減ると時間はもっとかかります。

走って通勤なら、目黒通りを無駄なく直進。約6キロを、信号での停止等を考慮して1キロ7分で走っても、42分。夜も同じ時間で帰れます。「走った方が早いじゃん!」というわけで(実際早かった)、無駄な待ち時間を減らすことができ、運動にもなり、体重も落ち、健康にもなる。これは走るしかないでしょ!

『BORN TO RUN』に出会い、サンダルランを始める

会社まで走って往復する日々が続くうち、「じゃあ一回大会に出てみたいよね」ということになり、初レースとしてマウイ島で行われるマウイハーフマラソンに、夏休みも兼ねて出場することにしました。

21キロを走らないといけないので、通勤ランの他、休日には10キロ程度を走れるよう調整しました。実は本番まで21キロを走ったことはなかったのですが、初ハーフは2時間20分程度で無事完走できました。

ハーフマラソンを完走すると、「じゃあ次はフルマラソンだよね」となりますよね。しかし、ここで一冊の本と出会ってしまいます。その名も、『BORN TO RUN』。

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「走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”」というコピーには、「お前は何を言っているんだ?」という感じもありますが、この本を読んで、完全にヤラれます。

ざっくり紹介すると、超長距離走で数々の勝利を収めてきたウルトラランナーが、裸足で長時間走り続けるタラウマラ族と、どちらが速いかをメキシコの山奥で対決する、という話。

現代っ子な自分からすると「そりゃ最新のシューズや文明の利器を持っているウルトラランナーが勝つでしょ」と思うわけですが、車のタイヤを切ったサンダルを履き、民族衣装で走るタラウマラ族がめっちゃ速いわけです。胸熱過ぎる。

この本で、山の中を走るトレイルランニングというジャンルがあることを知り、その100マイル(約160キロ)のレースとして世界的に人気があるUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン。フランスのシャモニーで開催される、ヨーロッパアルプスの山岳地帯を走るトレイルランレース)に3年以内に出よう、という目標が自分の中で設定されます。

この辺からだいぶおかしくなってきて、タウラマラ族よろしく「サンダルで走り出そう!」と思い立ち、実際に購入、履いて走りはじめます。

裸足にサンダルで走っているとだいたい二度見されますが、慣れる慣れる。

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BORN TO RUNの登場人物が作っているLUNA Sandals

しかし、100マイルをいきなり走れるわけはありません。練習とレースを地道にこなしていきます。

その年の10月末には猪苗代湖で行われたハーフマラソンに出場、天候が悪く雨風に打たれ続け、それに対する準備もできておらず、低体温症気味になり前回のマウイのハーフマラソンから20分程度も遅く、制限時間(2時間50分)ギリギリで何とかゴール。

天気の急変など何が起きるかは分からないし、自分で対応していくしかないのだから、きちんと準備して臨まないといけないことを学びます。

当時の写真を見返すと、その後の11月中旬には、1周20キロ程度の河口湖を2周走りに行っていました。

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もっと長い距離を走るための食事

もっと長い距離を走れるようになりたい、そのためには何をすべきなのか。

まずは、食事です。

走りはじめてから、好きなものを好きなように食べつつも、糖質を取ることは控えるようになりました。以前は、飲み会になると「ビーポテ」といってビール&フライドポテトをひたすら飲み食いしていましたが、ビールをやめて、ウィスキーの4リットル入りペットボトルとソーダストリーム、レモン果汁を自宅に常備して無限にハイボールを作れる環境を構築し、外ではあまり飲まなくなりました。

さらにレースに出るようになってからは、より野菜中心の食生活にシフトしつつ「米を食べるなら玄米を」ということで、文明の利器「炊飯器」を購入します(それまでは鍋で炊いてました)。朝は玄米おにぎりを作り、リュックに背負って会社へ行きます。

主菜は肉か魚、野菜をたっぷり取るようになりました。カット野菜ですがたくさん食べ、ドレッシングやおかずも化学調味料がなるべく入っていないものを選びます。

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ある日のランチの様子

糖質をなるべく取らない、化学調味料が入っていない、自分の食べたいものを食べるとなると、どうしても自炊になります。飲み会以外で外食することはほぼなくなりました。

朝食にグリーンスムージーもやってみます。モデルか。

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Beerというコップに入っていますが、グリーンスムージーです

そんな感じで2013年が暮れていきます。この時点で走りはじめて7カ月ほど。

[doの章] 初トレランでの失敗から、100マイルを走り切るまで

2014年の年明け、初めてのトレイルランニングに行きます。埼玉県の越生で行われる初心者向けの講習会に参加しました。

この頃には、通勤も含めて普段からサンダルで走っていたのですが、サンダルでは走り方が変わります。踵ではなく、足の前の方で着地してペタペタと走るようになります。というのは、サンダルだと靴底(サンダル底)が薄すぎて、怖くて踵着地できないからです。

サンダルで走りはじめると、何だか裸足で走り回っていたころを思い出すのか、それ自体が楽しくてつい走りすぎてしまいます。しかし、最初はちょっと我慢して、少しずつ慣らしていった方がよさそうです。

僕の場合、足の前部が腱鞘炎のようになって腫れてしまい、かばいながら走ってました。その結果、走り方が不自然になってしまっていたことに加え、初めて不整地を走ったことから、思いっきり捻挫をしてしまいました。

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余談ですが、捻挫したまま社員旅行に行ってしこたま飲んだ結果、(記憶はありませんが)酔拳ばりの千鳥足を発揮、朝起きたら足が腫れ上がってまったく歩けず、同僚の車に乗せてもらって病院に直行。しばらく松葉杖生活を送ることになりました(自業自得)

7カ月目、フルマラソンに挑戦

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