エンジニアが知っておきたい法知識。ソースコード著作権&開発契約を元エンジニア弁護士に聞く!
法律トラブルを回避するための、エンジニアが留意すべき法律知識とは、一体どのようなものでしょうか。エンジニアの経験を持つIT弁護士・河瀬季(かわせとき)さんに話をうかがいました。
昨今、“無断転載”の線引きや引用のあり方など、インターネットと著作権の関わり、ひいては法律との関わりが注目される機会が増えてきました。そんな中、エンジニアとして働く人々はいかに法律と向き合っていけばいいのでしょうか。
企業に在籍しているエンジニアの場合、社内に法務担当者がいるかもしれませんが、法律と無関係ではいられません。使用するツールやサービスの高機能化に伴い、無償で多くのコードに触れる機会が増えています。また、自作サービスのフレームワークなどに、オープンソースソフトウェア(OSS)を利用したい方もいるでしょう。
しかし、OSSにも著作権の問題はついてまわります。個人開発の場合でもサービスのリリース時に法律の知識を正しく知っておかないと、サービスの公開停止を余儀なくされたり、損害賠償を請求されたりするケースにもつながりかねません。
もしあなたがフリーランスのエンジニアなら、受託開発契約書で確認する著作権上のポイントを押さえておけば、自分に不利な契約を避けられるでしょう。
法律トラブルを回避するための、エンジニアが留意すべき法律知識とは、一体どのようなものでしょうか。エンジニアの経験を持つIT弁護士・河瀬季(かわせとき)さんに話をうかがいました。
- モノリス法律事務所 弁護士・河瀬季(かわせ・とき/ @tokikawase/写真左)
- 元エンジニアの弁護士。大学入学直後よりエンジニア、ITライターとして働く。ITベンチャーの企業法務等を担当したのち、モノリス法律事務所を設立。システム開発など、IT企業の日常的業務の中で生じる法律問題、著作権や特許などの知的財産権分野のほか、投資や小規模M&Aなどベンチャー企業において特徴的に発生する法律問題などが得意分野。
- 聞き手:池田健人(いけだ・けんと/@ikenyal/写真右)
- 2011年に某Web系IT企業に入社したWebエンジニア。サーバサイドからフロントエンドを担当。そのためOSSを利用することも多く、法律知識も意識しながら業務を行う。エンジニアが関わる法律を、法律の専門家である弁護士がどのように解釈をしているのかに興味を持っている。
エンジニアが法律知識を知らないとどう困るのか?
- 池田
- すべてのエンジニアが法律知識を持っているわけではありません。法律知識を知らないと、どんな問題が起きるのでしょうか?
- 河瀬
- 関わっている案件で法律関係のトラブルが起きたときに、所属する会社や個人が大きな損害を被るリスクがあります。一例ですが、システム開発案件でクライアントとベンダーの合意が不十分だったために、納品後の売り上げが一瞬で吹き飛んでしまうようなリスクも考えられます。
裁判になり、会社の損害額が数千万円に上る場合もざらですし、私が担当した案件では、5,000万円の損害が出たこともありました。サラリーマンの一生の稼ぎ1のうち、約5分の1がたった1回の失敗で消えると考えると、その甚大さが想像できるのではないでしょうか。フリーランスエンジニアの方が、1,000万円もの売り上げを回収できなくなった事例もありました。
また、著作権を侵害してしまった場合も大損害になることがあります。たとえば、自分で制作した有料アプリが著作権法に違反しているとして配信停止を命じられた場合は、停止した次の日から売り上げが立たないことになってしまいます。
エンジニアが特に気をつけたいのは2点。著作権の問題と、受託開発時の契約書関連の問題です。
著作権編:著作権関連の最大のリスクは、差止請求権
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